「洗濯で1日3往復」──見落とされた家の“動き方”が、暮らしをじわじわ壊していく#column
設計のカギは「動き方」にある/時間のロスは、やがて人生のロスに
この記事でわかること
- 家づくりで最も重要な「生活動線」とは何か?
- よくある動線ミスが引き起こすリアルな後悔
- 展示場で得られる“体感”の重要性
- 間取り設計で見逃してはいけない具体的ポイント
はじめに:「暮らしやすさ」は見た目じゃ測れない
家の間取りを見るとき、つい「おしゃれさ」や「広さ」に目が行きがちです。でも、本当に大切なのは、その空間の中で自分がどう動くか。
動きにくい家は、見た目がどれだけ理想的でも、いずれ小さなストレスの塊になります。
今回は、「動線を軽視してしまった家族の後悔」をもとに、理想の住まいづくりに欠かせない視点をお届けします。
【1】サッカー帰りの泥んこ少年、そして絶望のリビング
日曜日の午後、郊外の住宅街。
小学3年の凜太郎くんが、泥だらけのユニフォームでサッカーから帰ってきました。
「おかーさーん!お風呂ー!」
玄関からリビングを突っ切って、階段を駆け上がり、ようやく2階の浴室へ。
床には、無数の泥の足跡が…。
母の美沙さんはため息をつきながら、雑巾を手にしました。
「リビング通らないと風呂に行けないなんて…引っ越してまだ2週間なのに、もう後悔してる…」
【2】洗濯ひとつで6回の階段…日常に潜む“時短破り”
平日の朝9時。
朝食を終えた美沙さんは、洗い上がった洗濯物を大きなカゴに詰め、階段をえっちらおっちら上って2階のベランダへ。
干し終えたら、また1階に戻り、今度は乾いた衣類を畳んで再び2階へ──。
主寝室は1階、子ども部屋は2階。その間を何度も往復。
「なんで洗濯機、ここだったんだろ…」
家づくりの時は、洗濯機の位置が“暮らしの中心”になるなんて、考えてもみなかったのです。
【3】見た目の理想と「暮らし」のすれ違い
美沙さん夫妻が家を建てると決めたとき、設計にはかなりこだわりました。
- 横入り玄関のスタイリッシュさ
- バルコニー横のバスルームで開放感
- キッチンは夢だったアイランド型
でも、実際にどんな順番で動くか──つまり“生活動線”については、ほとんど話題にしませんでした。
担当者も「デザイン重視のお客様ですね」と嬉しそうでしたが、暮らしやすさを支える設計の視点は、そこにはなかったのです。
【4】図面じゃ分からない。だから「歩く体験」が必要
家を建ててから気づく不便。それは、高くつく“後悔”です。
大事なのは、「建てる前に気づく」こと。そのための一番の方法は、モデルハウスを歩いて体験すること。
- A社:玄関→洗面→浴室が一直線、帰宅→入浴がスムーズ!
- B社:洗濯機とベランダが直結。洗う・干すが1フロア完結!
- C社:玄関からパントリーへ直行!買い物後の片付けが楽々!
**歩いて初めて分かる「使いやすさ」**は、図面では絶対に気づけません。
【5】今からチェックできる「生活動線」見逃しリスト
これから家を建てる、あるいは検討しているあなたへ。
下記のチェックポイントを、ぜひメモしてください。
- 洗濯機と干し場、収納場所は近いか?
- 帰宅後に手洗い・入浴までスムーズに行けるか?
- 買い物からキッチンまで最短ルートがあるか?
- トイレや子ども部屋の配置に無理がないか?
- 朝と夜、家族全員の動きをシミュレーションしたか?
このリストを持ってモデルハウスを歩けば、“見る目”が変わります。

おわりに:「いい家」とは、“動ける家”である
デザインも設備ももちろん大切。
でも、暮らしが始まってから本当に実感するのは、「動きやすいかどうか」。
田中さん一家のように、間取りが原因で日々の動作が非効率になると、1日10分のムダが10年で1,200時間──ほぼ1ヶ月分の人生をロスしている計算になります。
家は、見た目ではなく「動き」で選ぶもの。ぜひ展示場に足を運び、「自分の動線」を体で感じてください。
未来のあなたが、もっと快適に暮らせる家に出会うために。